ハーマンミラーが目指す未来

ハーマンミラー(Herman Miller)は、人間工学・デザイン・サステナビリティを軸に、働き方の未来を形づくる家具ブランドです。創業家De Pree一族の思想からMillerKnollが掲げる未来、そしてアンディ・オーウェンCEOのビジョンまで、ハーマンミラーが目指す「これからの価値」を紐解いていきます。
1. ハーマンミラーとは
ハーマンミラー(Herman Miller)は、アメリカ・ミシガン州を拠点とするオフィス家具・ホーム家具メーカーです。
- 高性能ワークチェア(アーロンチェア、エンボディチェア、セイルチェアなど)
- イームズ夫妻やジョージ・ネルソンが手がけたミッドセンチュリー家具
- オフィス空間全体の設計・ワークプレイス戦略
これらを手がける、「働き方と暮らし方を総合的にデザインする会社」です。
ハーマンミラー ジャパン株式会社(Herman Miller Japan)は、その日本法人として、オフィス家具・ホームオフィス向け家具を展開しています。正規販売店は、日本国内での販売とアフターサービスを担い、ユーザーとブランドをつなぐ役割を果たしています。
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ハーマンミラー創業家
ハーマンミラーの歴史を語るときに欠かせないのが、創業家である D.J. De Pree(ディー・ジェイ・デ・プリー)、Hugh De Pree(ヒュー・デ・プリー)、Max De Pree(マックス・デ・プリー)の三人です。 彼らの意思決定と価値観が、現在の Herman Miller / MillerKnoll の企業文化とデザイン哲学の土台をつくりました。
D.J. De Pree:危機からブランドを生み出した創業経営者
1905年に前身となる家具会社に入社した D.J. De Pree は、やがて経営を担い、1923年に出資者の一人(義父)であった Herman Miller の名を冠し、社名を「Herman Miller」に変更しました。大恐慌のなかで倒産の危機に直面しながらも、「質の高いデザインと正直なものづくり」で生き残る道を選び、後にイームズ夫妻やジョージ・ネルソンらとの協働へとつながっていきます。
Hugh De Pree:近代経営と企業文化を整えた二代目
D.J. の長男である Hugh De Pree(ヒュー・デ・プリー) は、成長期のハーマンミラーを引き継ぎ、オフィス家具メーカーとしての基盤づくりを進めました。社員一人ひとりを尊重する企業文化や、長く働ける環境づくりに力を注ぎ、現在のハーマンミラーに受け継がれる「人を大切にする会社」というイメージを形づくった人物です。
Max De Pree:リーダーシップと「人間らしい組織」の思想
Hugh De Pree の弟 Max De Pree(マックス・デ・プリー) は、後にCEOとなり、著書『Leadership Is an Art(リーダーシップとはアートである)』でも知られています。彼は、ハーマンミラーのリーダーシップを「人の可能性を引き出すこと」として定義し、デザインだけでなく組織運営そのものも“人間中心”であるべきだと語りました。
De Pree 一族が築いたこの価値観は、現在の MillerKnoll における「Human-centered Design(人間中心のデザイン)」や、ウェルビーイング・サステナビリティを重視する姿勢にも色濃く反映されています。ハーマンミラーが目指す未来は、創業家が大切にしてきた「人と共に成長する企業」という物語の延長線上にあると言えるでしょう。
2. Knollとの統合
2021年、ハーマンミラーは同じくデザイン家具ブランドとして知られる Knoll(ノル) と統合し、新たな企業グループ MillerKnoll(ミラーノル) が誕生しました。
- ミッドセンチュリーデザインを中心としたデザイン文化の共有
- オフィス家具・ホーム家具・空間デザインのポートフォリオ拡大
- グローバル市場における提案力・供給力の強化
統合の背景には、これらの戦略を含め
「20世紀に築かれた名作家具の思想を、21世紀の働き方と暮らしに合わせて進化させる」
というビジョンの共有だと考えています。
イームズ(ハーマンミラー)、ネルソン(ハーマンミラー)、サーリネン(Knoll)、ミース・ファン・デル・ローエ(Knoll)といったデザイナー/建築家たちに共通していたのは、「デザインとは、人間の問題を解決するための行為である」という思想です。
Herman Miller と Knoll の統合は、単なる規模拡大ではなく、「問題解決としてのデザイン思想」をより広い領域で具体化するための基盤づくりだと言えるでしょう。
3. MillerKnoll が目指す3つの未来軸
MillerKnoll(ミラーノル)のビジョンを、現場の販売・フィッティング経験から整理すると、次の3つの軸に集約されると感じています。
3-1. Well-being(ウェルビーイング)と人間工学
世界中の企業で、「従業員の健康・ウェルビーイング」が重要な経営課題となっています。 ハーマンミラーのワークチェアは、単に座れる椅子ではありません。
- 姿勢の安定とサポート
- 呼吸や血流への配慮
- 首・肩・腰への負担軽減
- 長時間作業における集中力維持
といった要素を総合的に考え、日々の仕事に直結する変化を生む「人間工学に基づく道具」です。 ハーマンミラーが目指す未来のひとつは、「椅子を通じて働く人の健康とパフォーマンスを支えること」と言えます。
3-2. Sustainability(サステナビリティ)と長寿命設計
アーロンチェア リマスタードモデルに「海洋再生プラスチック」が採用されているように、ハーマンミラーは環境負荷を低減する取り組みを強化しています。
しかし、サステナビリティは素材だけの問題ではありません。
- 10年以上使えることを前提に設計された構造
- 使い捨てではない修理・パーツ交換を前提とした設計思想
- 長期保証(ワークチェアで最大12年)
これらを備えた「長寿命プロダクト」をハーマンミラーは、つくってきました。適切に使われている個体は、驚くほどしっかり機能しています。これは、“長く使えること自体がサステナブルである”という価値観の表れです。
3-3. Future of Work(働き方の未来)とワークプレイスデザイン
コロナ禍以降、「オフィスに全員が集まる」ことが前提ではなくなり、働き方のバリエーションが一気に広がりました。
- ハイブリッドワーク
- リモートワーク・在宅勤務
- フリーアドレス
- 集中作業エリアとコラボレーションエリアの切り替え
MillerKnoll は、椅子単体ではなく、「人・空間・テクノロジーを含めた“働く環境そのもの”を設計する会社」へとシフトしています。
アーロンチェアやエンボディチェアは、その中核にある「パフォーマンスシーティング(Performance Seating)」として位置づけられています。つまり、「どこで働いていても、身体に負担をかけず、集中して仕事ができる状態」をつくるインターフェースなのです。
4. ハーマンミラーが目指す未来
ハーマンミラーが MillerKnoll として目指している未来は、
- 人間中心の働き方(Well-being)を支えること
- 環境に配慮しながら長く使える家具を提供すること
- 多様な働き方・暮らし方に対応できるワークプレイスをデザインすること
だと考えています。
1脚の椅子を選ぶことは、これからの10年・20年の働き方と健康に投資することでもあります。私たち正規販売店も、このビジョンを、「お客様一人ひとりの身体・仕事・生活」に翻訳して提案する役割を担っています。
5. アンディ・オーウェンCEOのビジョン
ハーマンミラーとノルを統合し、MillerKnoll を現在のグローバルデザイン企業へと導いているのが、現CEOのアンディ・オーウェン(Andi Owen)です。「デザインを通じて人々の働き方と人生をより良くする」というハーマンミラー本来の思想を、現代の文脈に合わせて再定義したリーダーとして高く評価されています。
5-1. ハーマンミラーとKnoll統合を“思想の共創”へと昇華
アンディ・オーウェンは、20世紀から続くデザイン哲学を未来の働き方につなげる統合へと導きました。
5-2. 「Future of Work」を明確な企業ビジョンとして提示
ハイブリッドワーク・デジタルワークが当たり前になった現代において、アンディCEOは、
- 人間中心の働き方(Human-centered Work)
- ウェルビーイング(Well-being)の向上
- 空間・椅子・テクノロジーを統合したワークプレイス戦略
を MillerKnoll の中心ビジョンに据えています。
これはまさに、アーロンチェア・エンボディチェアが長年追求してきた“働く人を支える椅子”という思想と一致します。
5-3. サステナビリティと素材革新の推進
アンディ・オーウェンの強いリーダーシップによって、
- 海洋再生プラスチックの活用
- 持続可能なサプライチェーン
- 長寿命設計を前提としたプロダクト開発
が MillerKnoll の重要戦略として定着しました。
これは単なるマーケティングではなく、「家具は長く使えてこそ価値がある」というハーマンミラーのDNAと完全に一致する方向性です。
5-4. DEI(多様性・公平性・包摂性)の推進
アンディ・オーウェンは、ハーマンミラーの歴史にある「すべての人のためのデザイン(Design for All)」を現代的に発展させ、組織運営・商品設計の両面で実行しています。これはアーロンチェアのサイズ展開や、エンボディチェアのユニバーサルな設計思想とも深くつながるものです。
「人間と働き方の未来」という視点から製品開発と企業運営を行っている点は、他の家具ブランドにはない強みです。
ハーマンミラーとMillerKnollに関するよくある質問(FAQ)
ハーマンミラーとはどのようなブランドですか?
ハーマンミラー(Herman Miller)は、アーロンチェアなどの高性能ワークチェアと、 イームズやネルソンの家具で知られるアメリカの家具ブランドです。 人間工学・デザイン・サステナビリティを重視し、働き方と暮らし方をデザインする 企業グループ MillerKnoll(ミラーノル)の一員です。
Herman Miller と MillerKnoll の違いは何ですか?
MillerKnoll(ミラーノル)は、Herman Miller と Knoll を中心とした 家具・インテリアブランドのグループ名です。 その中でハーマンミラーは、従来どおりワークチェアやオフィス家具、 ミッドセンチュリー家具を展開するブランドとして存在しています。
ハーマンミラーの椅子はなぜ高価なのですか?
長年の人間工学研究にもとづく設計、長寿命を前提とした構造、 修理可能なパーツ構成、環境配慮型の素材選定、 そして最大12年の長期保証など、長く使うほど価値が出る要素が多く含まれているためです。 単なる「高級家具」ではなく、働く人の健康とパフォーマンスを支える プロフェッショナルな道具として設計されています。
ハーマンミラーの正規販売店から購入するメリットは何ですか?
正規販売店では、国内正規品としての長期保証に加え、 体格や作業内容に合わせたモデル・サイズ・調整方法の提案を受けられます。 購入前のフィッティングや相談、購入後のメンテナンスや修理対応も含めて、 長く安心して使うためのサポートが受けられることが大きなメリットです。
ハーマンミラーが目指す「未来」とは何ですか?
ハーマンミラーが目指す未来は、単に椅子や家具を提供するのではなく、 働く人・組織・社会全体のウェルビーイングを高めることです。 人間工学・サステナビリティ・Future of Work といったテーマを通じて、 より健康的で創造的な働き方・暮らし方をサポートしようとしています。 そのビジョンを具体的な製品やワークプレイスデザインとして具現化しているのが MillerKnoll グループです。










Ergon chairは、整形外科や血管医学の専門家と協力し人間工学的なアプローチから設計された最初のオフィスチェアでした。Ergon chairは、現在ではオフィスチェアに標準的に装備されているガス圧シリンダーを備えていました。




Alexander Girard 1907-1993


ジラードのテキスタイル・ファブリックは現在も、Maharam (マハラム)のTextiles of the 20th Centuryコレクションとして入手可能です。

Charles Eames 1907-1978
George Nelson 1908-1986

