古いアーロンチェアを長く使う方法 | アーロンチェアのオーバーホール
アーロンチェアは、1994年の発売以来「20年以上使えるワークチェア」として多くのユーザーに愛されています。クラシック・アーロンチェア(1994–2016)は、日本国内でも長期間使用されている個体が多く「修理」「オーバーホール(総合点検)」に関するお問い合わせをいただく機会が増えています。
ハーマンミラー公式メンテナンスセンターが提供する有料オーバーホールサービスの内容と
アーロンチェアのクラシックモデルを長く使うためのポイントをまとめました。
クラシックアーロンチェアのユーザーのみなさまにとって、最も信頼できる「維持管理の指針」としてご活用いただければ幸いです。
1. ハーマンミラー公式メンテナンスセンターのオーバーホールとは?
ハーマンミラーメンテナンスセンターは、日本国内で唯一のハーマンミラー公式修理センターです。
ハーマンミラーメンテナンスでは、有償サービスとして
純正パーツ・純正治具によるアーロンチェアのオーバーホール(分解点検)サービスを提供しています。
オーバーホールサービスは、単なるクリーニングではなく以下のような工程で構成されています。
- チェア全体の分解
- ベース・メカ・アームフレームなど構造部の洗浄
- ワイヤー、チルト機構など可動部の摩耗診断
- ガスシリンダーの保持力・規格点検
- リクライニング機構の動作チェックと調整
- ベースやメカ部の再グリスアップ(潤滑)
- ペリクル(張地)のテンションチェック
- 再組み立て後の全体動作チェック(複数項目)
中古品の表面だけを整える簡易クリーニングとは異なり、内部機構まで含めて診断・点検する「総合オーバーホール」である点が大きな特徴です。
2. なぜクラシック・アーロンチェアにオーバーホールが必要なのか?
10年以上使用されたクラシック・アーロンチェアには、何らかの劣化が見られます。
具体的には、次のような症状が典型的です。
- チルト機構の摩耗(リクライニングの戻りが悪い・動きが重い)
- ワイヤーや内部パーツの経年劣化
- ガスシリンダーの保持力低下(座面がじわじわ下がる)
- アームパッドのひび割れ・破れ
- ペリクル(張地)のテンション低下・たわみ
- キャスター樹脂部の摩耗・転がりの悪化
これらは外観だけでは判断しづらく、ユーザーが「おかしいな」と感じる頃には、不具合がかなり進行していることも珍しくありません。 その意味で、公式オーバーホールは、クラシック・アーロンチェアを安全に延命させる最も確実な方法といえます。
3. クリーニングとの違い|純正パーツの重要性
一般的なオフィスチェアクリーニングでは、座面や背もたれの表面洗浄・簡易分解が中心になります。
一方で、ハーマンミラー公式メンテナンスセンターは、劣化が見られるパーツを純正規格のパーツを用いの交換が可能です。
(注)オーバーホール項目以外の修理実施には別途費用が発生します。
特にアーロンチェアは、
- ガスシリンダー
- チルト機構周りのブラケット・リンク
- リクライニングテンションを制御する内部パーツ
といった部分がミリ単位の公差で設計されているため、互換パーツの使用は推奨されません。
安全性と本来の性能を保つ意味で、純正部品を使用する公式メンテナンスセンターの存在は非常に大きいと感じています。
4. クラシックユーザー向け:修理して使うべきか、買い替えるべきか?
ここからは、クラシック・アーロンチェアをお使いの方向けに
「保証期間対象外のアーロンチェアを修理・オーバーホールで延命するべきか」
「新品リマスタードに買い替えるべきか」の目安を整理します。
4-1. ペリクルに破れ・穴がある場合
クラシックのペリクルは、製造からすでに10年以上が経過している個体がほとんどで、張地自体が素材寿命に近づいています。 ペリクルに破れや大きな穴がある場合、公式でも修理対応が難しく、買い替えをおすすめせざるを得ないケースが多いのが実情です。
4-2. 座面が大きく沈む(ガスシリンダーの不具合)
座面が時間とともにじわじわ下がる症状は、ガスシリンダーの経年劣化が原因です。シリンダー交換自体は技術的には可能ですが、他のパーツも同時に劣化していることが多く、オーバーホール費用と新品購入費用を比較して検討する余地があります。
4-3. アームのぐらつき・きしみ
アームのぐらつきや軋みは、ネジの緩みやパーツの摩耗が原因で、オーバーホールやパーツ交換によって改善できるケースが多い部分です。クラシックに愛着がある方は、一度公式メンテナンスセンターで診断してもらう価値があります。
4-4. リクライニングの戻りが悪い・動きが重い
リクライニング機構の不調は、内部チルト機構の摩耗やグリス切れが原因であることが多く、オーバーホールの対象としては代表的な症状です。ただし、パーツ交換を含む本格的な修理になると費用が高めになることもあり、「あと何年使いたいか?」を踏まえた判断が必要です。
5. 新品(リマスタード)への買い替えが合理的になるケース
正規販売店として、多くのお客様のご相談をお受けしてきた中で
「これは素直に新品への買い替えをおすすめしたほうがよい」と感じるケースがいくつかあります。
- ペリクルの劣化・破れが進んでいる(張地交換が困難)
- ガスシリンダー、チルト機構など複数箇所の不具合が同時に発生している
- デスクワーク時間が1日5時間以上に増えた
- 旧来のサイズ選びが現在の体型や働き方に合っていない
- 長期保証(12年)付きで安心して使いたい
とくに現行モデルの「アーロンチェア リマスタード」は、チルト機構・座り心地の安定性・サポート性がクラシックから大きく進化しており、長時間のPC作業が当たり前になった現在のワークスタイルにより最適化されています。
クラシックに愛着があるお客様も多いのですが、「これからの10年を考えたとき、どちらが体にとって良い選択か?」という観点で見ると、リマスタードへの買い替えが合理的なケースは少なくありません。
6. 公式オーバーホールを検討すべき人
次のような方には、ハーマンミラーメンテナンスセンターでのオーバーホールサービスを一度検討されることをおすすめします。
- クラシック・アーロンチェアをあと3〜5年、安心して使いたい
- 愛着のある個体があり、できれば手放したくない
- 内部パーツを含めた安全性をしっかり確保したい
- 純正パーツ・純正規格の安心感を重視したい
一方で、「座り心地の進化や保証を含めて、これからの10年を快適にしたい」という方には、リマスタードへの買い替えをご提案することが多くなります。
7. オーバーホールの流れ
オーバーホールの手順は、おおまかに次のような流れになります。
- アーロンチェア本体の集荷(宅配便など)
- メンテナンスセンター到着後、外観チェック
- 座面・背もたれ・ベース・メカを含む全分解
- 内部パーツの摩耗・劣化診断
- ベース・メカの洗浄と再グリスアップ
- 必要に応じた純正パーツ交換(別途見積り)
- 再組立後、全動作項目の最終チェック
- ご自宅またはオフィスへの返送
「椅子の車検」のようなイメージで、内部機構まで含めて点検するイメージです。
(注)オーバーホール項目以外の修理実施には別途費用が発生。
(注)「製品不具合箇所の検品・レポート報告・お見積り」のご案内まで 3〜4週間程度の時間を要しています。
8. アーロンチェアを使い続ける意義
ハーマンミラーは、単に「椅子を売るブランド」ではなく、人間工学(エルゴノミクス)とサステナビリティを重視したブランドです。
長く安全に使い続けるためのメンテナンス情報を正しくお伝えすることは、正規販売店としても非常に重要な役割だと考えています。
クラシック・アーロンチェアのオーバーホールを通じて、愛着のある1脚を大切に使い続ける選択肢もあれば
現行モデル(リマスタード)に乗り換え、これからの10年をさらに快適にする選択肢もあります。
その判断材料のひとつとしてお役に立てば幸いです。
9. アーロンチェアの新品購入・買い替えを検討されている方へ
クラシック・アーロンチェアのオーバーホールとあわせて
新品モデル(アーロンチェア リマスタード)の導入・買い替えを検討される方も増えています。
THE CHAIR SHOP(Chair株式会社)は、ハーマンミラー正規販売代理店として
全サイズの試座・フィッティングおよび12年保証付きの正規販売に対応しています。
新品アーロンチェアのご検討には、以下のページもあわせてご覧ください。
▶ アーロンチェア リマスタード Bサイズ グラファイト|THE CHAIR SHOP(正規販売店)
https://thechairshop.com/products/aeronchair
旧モデルの状態やお悩みに応じて、「オーバーホール」か「新品への買い替え」どちらが合理的か
お一人おひとりの状況に合わせたご相談も承っております。



監修:片上 太朗(ハーマンミラー認定スペシャリスト:エルゴノミックアドバイザー)

