アクション・オフィス
ロバート・プロプストが率いるハーマンミラー・リサーチ・コーポレーションが開発したアクション・オフィス・システム(Action Office I )はジョージ・ネルソンのデザインによって、1964年にハーマンミラーから発表されました。アクション・オフィス・システムは、パネルとそれに付属したコンポ―ネントからなる、世界初のオープン・プランのオフィス・システムでした。
1968年に発表されたハーマンミラーのアクション・オフィス・システム(Action Office II)において、ロバート・プロプストはアクション・オフィス・システムのベースとしてモジュラー・パネルユニットを導入しました。オフィスデザインに革命をもたらすものでした。
アクション・オフィスは、ロバート・プロプストのモダンオフィスに対する様々なアイデアを具現化したプロダクトです。1960年に創立されたハーマンミラー・リサーチ・コーポレーションでは、数学者や行動心理学者を含む様々な分野の研究者の理論を参考対象にしていました。
たとえば、エドワード・T・ホール (文化人類学者) は、“かくれた次元” (1966年) でパーソナルスペースを定義しています。これは、距離によって起こる人間の空間知覚の変化を示した理論です。
1.密接距離 親しい人に許される空間 近接相(0〜15cm)/遠方相(15〜45cm)
2.個体距離 相手の表情が読み取れる空間 近接相(45〜75cm)/遠方相(75〜120cm)
3.社会距離 容易に会話ができる空間 近接相(1.2〜2m)/遠方相(2〜3.5m)
4.公共距離 複数の相手が見渡せる空間 近接相(3.5〜7m)/遠方相(7m以上)
第二次大戦中に進化した軍需産業技術(繊維強化プラスチック)を製品に転用し、チャールズ・イームズは新時代の製品を生み出しました。プロプストは、当時の新しい知覚理論を援用して新時代のオフィス空間を生み出したと言えるかも知れません。
パネルシステムの導入によって距離による知覚は遮断されます。アクション・オフィスは、この遮断機能を利用することでオフィス空間のパーソナルスペースをコントロールしようとした初めての試みでした。
アクション・オフィスは、時間をかけてオフィスが必要とするものになるように、組み合わせたり再結合したりできる一連のコンポーネントとして設計されました。マウス・パッドのデザイナーであるデザイナーのジャック・ケリーは、1960 年代から 1970 年代初頭にかけてプロプストと協力し、多くのアクション・オフィス・コンポーネントのデザインにおいて重要な役割を果たしています。
アクション・オフィスによって人々の実際の働き方に適したワークスペース・ソリューションを実現することが可能になりました。と同時に、オフィスの空間をパーティションで分離し、個々のワークスペースをつくりだすオフィス・スタイル、後に「キュービクル」と呼ばれるスタイルを生み出す契機となります。